《年長組》
冬の澄み渡った空気を感じながらも「寒いね…ジャンパー着なくても大丈夫?」薄着の子に尋ねると、寒さなんか何のそのと言わんばかりに「ぜんぜん、へっちゃら…。」と、この時期特に年長えを夢中にさせるこま回し、体を沢山動かす訳ではないので寒いはずだが、日々の気迫が心も体も熱くさせていくようだ。試行錯誤しながら『芯棒巻きの方が良く回る子』『普通に巻いた方が強い子』など自分に合った方法を見つけだす。
先日、午後礼で園長先生からこまの技を披露してもらうと、まねっ子して更なる挑戦を始めたがり、ケンカゴマ、コッパ(上から投げる技)、手の平に乗せたり…そして今よりもっと長く回せるようになりたい子など、次へのステップが展開されていく。しかし、上手く回せないのだが常にクラスの輪に入り、諦めずにひたすら頑張り続ける子も見逃せない。そのような子に「何とか回せるようにしてあげたい。」と担任以外の職員も対応していった。勿論クラスの仲間も応援し、支えている。「ビュッと早くひもを引っ張るんだよ。」「もっと強く巻いてごらん。」とアドバイスしたり、転がってしまったこまをすぐに拾いに行ってあげる優しさは、クラス内のつながりが見えてくる。一方では「前は回せたのに回らなくなっちゃった…。」と自分の気持ちを訴え、スランプを乗り越えようと、伝えに来る子がいたり…。大きな輪をつくって遊ぶ子どもの世界にも様々な気持ちが入り混じっている。ある日、普段感情を表に出す事が控えめなAちゃんが回せるようになった時、連日の努力がやっと報われ、部屋に戻る後ろ姿は小さく短いスキップをしていた。こちらもホッとし「良かった。」と喜びも大きなものとなって返ってくる。「先生、勝負しよう!!」と挑むBくん、こちらもおちおち出来ず気合いが入る。回り続ける残り少ない仲間を応援する姿は、子ども同士の関わりの深さを感じる。日を重ねる毎に、大きなかけ声と共に、腰を低くリズムを取りながら着地場所を定めるまなざしは、1人1人が自分を出せるようになってきた証拠である。
こま大会本番は1回勝負の為、今まで培った力を存分に発揮できなかった子もいたが、1つの目標に向かって夢中に取り組んだこと。そして新たな自分を発見し、自信を持てたことは『継続は力なり』と子ども自身が実感したことであろう。同時にそんな個々の成長を側で援助しながら見守った約20日間。成功した時の喜びを多く子ども達とハイタッチをして、共に味わった。
『継続は宝でもある』と思える幸せな時間を過ごした。
小学校へ行っても根っ子の部分であるふたばっ子のたくましさを存分に発揮して欲しいと願う。
=ふたば幼稚園のこまは40年もの歴史がある。しかし現在のこまは、こま職人が皆無に近い為、現年長児分の入手が最後になるかもしれない。途絶える事がない様続けていきたい。